告解

from takala

14-15 y/o〔in detail〕

 これだけ書いて消化,或いは昇華がし切れない。輪華に掛けられた呪いに対し呪い返ししようとしているのか。はたまた彼女に呪いを発し、束縛を強力にしたいのか。復讐したい想いは彼女に対しても在るのか。

 毎夜夢を見る様になっている。狂おしい。精神的圧迫がある。矛盾するが夢を見る事が喜びでもある。少女の輪華に逢える。当時の自分は一挙手一投足、彼女に最善を尽くしていた。その積もりだが失敗した。あれ以上は不可能だった。当時の自分には。

 今の想念を視て欲しい。当時の彼女に。夢でしか逢えないがこちらで想いを灌ぐ事で当時の彼女の苦難は、目減りするのでないか。

 現在の輪華に何を言ってもどんな事をしたとしても、分かっている・愛しているといった返答だ。容認の言を掛けられ続けても自分は当時の情景から逃れる事は出来ず、又逃れる試みもしないだろう。

 16歳の詳細は未だ書かない。万端整えば綴ろう。

 

 罪悪感の中で思春期は過ぎた。歯止めが利かなくなったと書いたが、事実コントロールは全く出来なくなった。輪華が目の前に居れば為す術無く。

 彼女は誘惑しかしなかった。間違いなく当人に反論されるだろうが誘惑でなくば、一体何だったのだ。

 それは主に言葉で始まった。輪華は何者かに殺されそうな目をした。「高良と繋がって居なければ生きている意味が無い。本当に生きているか分からない」「私には価値が無い」「そこ(ベッド)に針(男性器)で貫かれていないと体が亡くなる。消える」「痛みと苦しみを感じさせて。ちゃんと生きているか知らせて、分からせて欲しい」この様な言葉は千も二千も吐き出されたと思うが、ある時は真摯な表情である時は涙が溢れる寸前で、ある時は甘える声音で囁く。

 言われると心拍が早鐘となる。性衝動の気配は未だ無い。輪華が死に引かれている気配を感じるからだ。紙の白さの顔色で無表情であったりする。どうしたら良いか何も判らなくなる。思考を乱す対象は今も昔も彼女しか居ない。

 充はここで躓いたのだろう。《望まれて愛を以て傷付けた》未だに彼は彼の所業を疑っていない。

 輪華はその後で微笑したり唇を被せて来たりした。笑いながら耳を食む、喉仏に歯をごく軽く立てる。するすると脱がされる。上半身だけだが何時までも何時までも指先と舌を這わされる。 これには絶対に耐えられなかった。

 要求はエスカレートして行った。例えば彼女には早い段階で自慰を禁じられていた。しかし彼女は非日常的な場所で一人、手淫する場面を見せて来た。閉じた便座に坐り込み、脚を開く。直ぐ下で床に坐って見ていろと言う。その日は指一本触れさせて貰えない。翌日漸く自由にして良いと許可がある。あらゆる場所、学校であれ課外活動で訪れた先であれ彼女はこれを行った。

  最初は行為中に力を込める事が出来なかった。彼女の骨が軋む音、感触を察したら上手く出来なかった。叱責でなく激しく咬まれた。咬まれながらソファーで彼女の体を支えていた。肩口から流血する程だった。彼女は上下でなく斜めに腰を動かした。14、5の少女の動きではない。

 首を絞める事、口を使えない様に指を咥えさせる事。どこからパターンが変わっただろうか。

 無表情を隠して柔和な表情をしている普段の彼女が、恍惚の目をする。人間のその目の色を初めて見た。何処から溢れるのか指を突き入れていれば、唾液は次から次にシーツを駄目にする位に流れ落ちる。性器も同様だった。仕組みが違うだけだ。指の位置を間違えれば輪華は吐いた。苦しがっている姿が愛おしいと感じた。

  下剤を彼女に使う事は危険だと思っていた。直ぐに脱水症状が起きるだろう。指を挿れてみれば便が付着する時があったが、だから何だと感じた。爪に入ろうと穢いとは思わない。何故それがタブーなのか分からない。そのまま口にした。挿入時は出血もあった、痛がり方が尋常ではなかった。悲鳴だった。彼女の口を押さえて無理に捩入れた。目先の快楽を優先した。全て後から、罪悪で胸が焦げる様な念に変わった。

 輪華に見えていたあの時々の女は、彼女ではなかったのだろう。どの瞬間に交代するのか判らないが、苦痛を望む人格と実際に苦痛を味わう人格は違ったのだ。だから逃げられた。20歳で再会した後に「高良のセックスの仕方が嫌いだ」と言われたのだ。こちらは混乱するしか無かった。

 守りたい対象を傷付ける事に、背徳の欣悦が存在する。応えないと輪華からこの役柄を外される。彼女は命令を下していたが、喜んで遂行していたのは紛れもなく自分だった。真剣に愛していたと今も言い切るが、困惑を隠し理由も掴めず哀しみが生じるのを隠し、彼女の不当な要求に疑問を投げ掛ける事は一度もしなかった。後で祈りながら泣いた。

 悪の権化の犠牲になった人間は、何を以て生き永らえるのだろうか。新たな犠牲を生み出して行くか、自己を殺める事で他人格を生み出して行くか。輪華の犠牲に成れただろうか。輪華は自己を殺める事を未来に於てしないだろうか。