告解

from takala

first 〔in detail〕

 現在の輪華に邪険にされたもので一つ思い出に浸り執筆してやろう。{しかし執筆中に彼女に呼ばれた為、途中で筆は濁る。御了承頂きたい}

 

 このブログ内に「first」という記事が有る。HP記事でも今一つ踏み込んで書いてはいない。こうした内容は各人のご想像に任せる方が粋である。

 微に入り細を穿って記憶していたと言いたい所だが、肝心な場面に霞がかかっている。10代半ばで初回を経験した男というのは定着した記憶を持っていない。自分も例外ではない。夢中。空白。以上。

 集中した試験,試合。あれらと似ている。特に相手が輪華である。始まる前から術中である。よもや、わざとらしくジュースを溢したとは思わない。残念ながら彼女はこうした計算が丸で出来ないのである。天性の馬鹿と言えるのだが突き抜けた馬鹿と、天才とは紙一重

 正直に言って猜疑心があった。彼女は「誰ともした事は無い」とそれ迄言っていた。その割には真っ直ぐこちらの唇を狙って来た、吸い込む様に。

 初体験以前になるが彼女には部分的に、口での愛撫をしていた。指と手と腕。足又は脚。辛うじて頬か額、首。鎖骨。肩。髪。舌を使うとその先を促して来る為、「今日はここ迄」と言って止めた。

 唇には口をつけなかった。色々としておきながら今更であるが、唇は指で触るだけでも性行為への入り口だと感じた。恐怖感はあった。彼女との関係が悪い方向に変わるのでないかといった懸念だ。

 輪華は今迄はされるままだった。先を促すが見ているだけなのだ。他人行儀に。軽く咬む等すれば我に返った様に驚いた顔をする。急に少女の反応とは言えない反応、馴れた女の声を出す。それに対して自分が怖気付く。この様な茶番を繰り返していたのだが、あれはあれで尊ぶべき過程であったのだろう。

 

 話が戻る。彼女は愛撫とはこうするのだと示す様に唇をつけて来た。驚いた。先ず舌を吸われた。歯の一つ一つを舌でまさぐられる。断っておくが初回である。彼女は目を閉じていたが、こちらは目を閉じる事に意識が回らない。

 永遠程に長かった。時間が止まれば良い等とよく言うが実際に長かった。唇を取られるかという強さ、口内が乾く。彼女が水分を奪って行く。どうすべきか分からないので取り敢えずは、された事をそのまま返した。

 ファーストキスは檸檬の味とでも言い表したいものだが、微かに甘いとは思った。舌で確かめる前に消える甘さだ。

 さてそこからである。輪華は制服も下着も先に脱いでおり、こちらの脱ぎ待ちである。時間をかけていたら脱がされた。下を。

 ベッドには行かなかった。テーブルの脚が邪魔だったので右手でずらした。これは記憶している。カーテンを閉める暇が無かった。夕暮れだった。冬の日没は早い。仄暗い部屋で輪華の輪郭は、幽霊の如く曖昧だった。肌が目を疑う程に真っ白だった。

 下腹部に青い血管が透けていた。華奢のレベルではなかった。傷が有った。あちらこちら触れる、その度にその箇所の骨の形を感じる。また怖気付いた。力加減を誤ったら壊れる。折れる。どこから彼女が痛みを感じるのか分からない。先に進めない。

 輪華は眠そうな表情をしていた。目が潤んで赤かった。頬に珍しく赤みが差していた。首筋をゆっくりと舐め上げられた。彼女の温い舌の動きに合わせ、気が遠ざかった。こめかみを打たれた様な。ふらつきと視界の揺らぎを覚えた。心地良さで肌が粟立った。

 とてもじゃないが保たない。手順は理解しているが進まない。輪華を見た。彼女は何もかも知っている目をしていた。心を、その襞を覗かれていると思った。不快感は無かった。

 

 急かすのでなく、やはり先を促された。手を取られた。指。導かれるのだが入らない。恐らく鉛筆か何かでなくば入らない。ここで処女というのは確かだと信じた訳だが、膜の有無をその時は知らなかった。

 かなりの時間をかけた。本数を増やすと彼女は苦痛の表情だった。それを純粋に愉しめる様に変わる迄、余り時間はかからなかった。あれはあの時だけだった。あれが最上級の悦楽だったかも知れない。これ以上は無い彼女への影響だと感じた。指を抜いて口づけた。煮た林檎の確かな甘味がした、檸檬でなく。

 そして肝心な場面に霞がかかる。入った、がこれこそ保たない。益々気が遠くなった。輪華を気遣う事を忘れた。破滅的な快感だった。何故この行為に快楽が伴うのか、急ぎ考えようとした。考えられなかった。考えが纏まらないのは初めての体験だった。輪華が泣いている。悲しいのか痛覚からなのか、それとも歓喜。であって欲しいがそれなのか。只泣いている。だが気遣えない。

 終わると罪悪感に支配された。だから祈った。祈りとは罪悪感を消す為の、人間にとって只々都合が良いだけの行為,時間。当時はそう思っていた。祈りと共に更に罪悪感は募った。

 輪華はけろりとしていた。またしようね、と笑って言った。以降、二人で居れば歯止めは利かなくなった。抱いていた恐怖感は正しかった。