告解

from takala

復讐

輪華の占師活動縮小に伴い至極個人的な業の数々の片鱗を、徐々に露にして行こうかと思う。反省はしていない為に告解とは趣向が異なる。

予め注意書きするが、憎悪や狂気を伴う情愛を知らないならばこの記事に思う処は特に無く、また得るものもないであろう。この件は狂気の沙汰でなく然るべき心理の為せた業である。

 

現在も輪華の元配偶者・充(仮名)に生活費として月々100程は出しているが、彼は遣っていない。彼なりの些細な抵抗と云えよう。仮に充が遊興費に遣い込んでも痛手ですらない。不愉快にもならない。最初から思っていた通り金で解決するなら楽だ。

充とは互いに和解出来そうにない。しようと思ってもいない。少なくともこちらは。充は充でこちらに興味はないのだろう。現実に興味がないだろう。

彼は輪華の幻想と暮らしており孤独ではないらしい。充を罰するに孤独が最適だと当初は考えていたが誤りだった。

では「大事な妻を盗んだ男」から精神的支配を受けたらどうなるか。また自害するか。すれば良い。証拠が残らなければそれで良い。輪華の心身を長年虐げた罪は重い。心情を正直に吐露するが、充など死ねば良い。

思い出す度に憎い。他者に憎しみを抱いてはならないだろうか。時間労力共に無駄な気もするが、彼の死を願う程度には憎い。この感情は消えない。輪華には医師が絶句する位の夥しい傷が有る。その中には充が遊び半分で彼女に付けた傷が有る。

かつて自分は彼女に乞われて儀式として浄化として、傷を作った事はある。あれで良かったのか間違いではなかったか、他に方法は無かったのか未だに自問している。それを何の疑問も抱かず、軽い意識でやった充が憎らしい。

かと言って他者の身体を損壊する趣味は無い。仕返しに充に危害を加える気は無い。よって精神を壊滅させるにはどうしたら良いか考えた。より高等で効果的な呪いを考えた。自ら命を絶たせる様な呪いだ。

この地方には風俗でなく介助としての性処理サービスがあるが、その利用を充に受けさせる事を止めた。初期は輪華が充を介助していた。よくも次から次へ人の神経を逆撫でするものだと思うが、輪華を罰する訳にはいかない。

充に彼女のfilmを観せた。彼女中心に撮っているので相手(自分)はそれ程映り込んでいないが充分な衝撃であっただろう。

彼が満身創痍な時期であったことは卑怯だっただろうか。万全であったとして刺されでもしただろうか。喧嘩慣れしていない充の動作等、鈍過ぎて予測する迄もないが。

一度目は只淡々と観せただけだ。彼の反応を終始観察していた。約10年輪華の魔術に染まった充が手足の利かない状態でどうなるか見ていた。まあまあそれなりに愉快だった。プライドに縋り付いて生きて来た様な男の意志を、じっくりと折る過程は見物だった。輪華にはとてもではないが見せられない。その充の姿をではない。この浅ましい自分をだ。

 

二度目は更に屈辱的な境地に沈めようと考えた。だから介助してやった。サージカルグローブとローションを使用した。

更に上を行く辱しめの方法はまだ有った。輪華が彼にしてやっていたであろう事、或いは今の彼女がこちらに施している事。少女時代には未だ覚えていなかった事、何時の間にか何処かで覚えて来た手練手管。男に指を挿れ男の下半身の全ての箇所に、時間をかけ舌を這わせる彼女の魔術。言葉。速度。温度。湿度。力を使わず男を圧する技術。

そこ迄を再現したらこちらが屈辱だ。男の脚を舐める趣味も無い。同性愛に興味も無い。グローブを嵌めていたが非常に苦痛であった。この復讐は二度で終えた。

充には幾つか輪華の映像を渡したが、それで彼がどうなったか予想出来るだろうか。人の精神とは面白いもので、彼は見事に余計な情報を遮断した。時々映り込んでいる影は他の誰かでなく、彼自身であると転化。彼の世界では輪華は変わらず傍に居るらしいのだ。主張しない、裏切る事も皆無の従順な彼の妻。輪華は残酷な女だ。充の横暴を赦し続けた先で亡骸を残し、消えた様なもの。

かつて思春期に同じ事をされた。思春期程不安定な時期は、男には他に無い。自分は何とか折合いをつけ生き延びたが充は、性根が素直なだけに一生あのままだろう。それが輪華の復讐なのか愛なのか分からないが後者だとすれば、愛とは残忍だ。残忍な呪縛だ。

 

輪華には罰して欲しいのか赦して欲しいのかどちらかと問われたが、そのどちらでも良い。彼女の判断を神の判断とする。彼女に知られたくない感情より知って欲しい感情が勝った。単に知って欲しかっただけだ。何故なら一連の行為を悪事とは思っていないのだ。彼女には罰された上で赦されたいのかも知れぬ。神でなく彼女に。