告解

from takala

人格

 やはり他人格はどうやら輪華の中にはもう居ないらしい。イシキと名乗るISH(纏め役)以外は。

 心理検査2種だけで正しく判断出来るのか果てしなく疑問ではあるが、プロである医師が言うのだから一応は納得せざるを得ない。本音を言えばDIDの診察を始めた時と同様、複数の医師が身を入れて調べて欲しい所だ。費用は幾らかかっても構わない。輪華が言うには「昔は初めに7個位の検査をした」そうである。

 頻繁に退行が起こるは仕方がないとの事。実年齢より幼い受け答えが平常で出る、一貫した人格と感じられない不安定さも当然であると言う。

 退行は目の当たりにしなければ想像がつかないだろう。3歳から6歳辺りに戻る。切っ掛けは些細な事柄。輪華は病院に併設されている薬局にすら、急に辿り着けなくなる時がある。道順が分からない場合もあるが横断歩道を、左右確認せず飛び出してしまう事がある。周囲に神々が降りて霊視している時。既に何らかの切っ掛けで退行している時。これ迄よく生きて来たものだと思うが、その時は病院内の駐車場で車が来た為、腕を引いた。それだけだ。突然退行した。幼い声で「パパ」と呼ばれた。

 退行時に年齢を尋ねてみた事がある。やはり幼いたどたどしい声で「ちらない(知らない)」と答えた。娘より幼い様子だった。

 

 彼女の姉にも似た様な面がある。退行や幼さとは全く異なるのだが、怒らせると手がつけられない部分だ。幸運な事に自分はこの姉の闇の部分に抵触した事はない。思うに反社会的組織に生きる面々に似ている。人格が非常に不安定なのだ。生育歴を考えれば確かに仕方がないのかも知れない。

 虐待で死亡する子供は後を絶たない。輪華は命が在る事に感謝している、家族が居り一緒に今を生きられる事に感謝していると言う。同じ思いだが虐待が落とす影の深さに慄然とする。