告解

from takala

揺籠

 この人生は矛盾撞着。感情が相反する。

 充に会う機会は多い。輪華には会わせない。彼には事務的に対応している。彼への怒りが急速に膨れ上がったなら娘を連れて行く。娘が間に入っていれば充を攻撃しなくて済む。

 輪華は充が死の淵から甦ったから、こちらに戻って来たと言った。充が死んだなら体には、戻らなかったと。その場合霊体でこちらと充とを往き来したのだろう。

 充を飼っておけば、彼を外敵から守っておけば輪華は何も言わない。輪華が安心する。充の世話をし生殺しにしておけばそれで良い。特に難儀ではない。大抵の事は一人でやれる様になっている。発声が出来ないだけだ。

 充の実家は父親しか機能していない。既に70だ。充の世話は出来ない。母親は精神病、妹は無職。充もまた親の介護が不可能。実家に金蔓にされるのを防いでおく。防がねばこちらの金も流れるからだ。

 輪華は充が実家の犠牲になるのを不安がっている。だから充を守ってやる。輪華の安らぎの為にである。

 一方で彼の精神を完全にコントロールしておきたい。決してこちらに逆らわない様に。輪華が今の充に何を言っても彼が間違いを犯さぬ様に。

 未だ不十分だ。仮に自分が今死んだとしたら輪華は充に舞い戻るだろう。現段階の様子を見ていると充は、輪華の言葉には反応していない。都合の悪い部分は聞いていない。過去の輪華が絶対なのだろう。

 しかし彼女はそれを知っている。過去の輪華の顔をして充を誘惑する事位は、朝飯前であろう。

 斯くあるべき姿を彼女は見せてくれる。自分にも。16歳の輪華。離れる事なく傍に永遠に居て欲しかった彼女、その顔を今してくれる。