告解

from takala

first

昔話、特に20代シリーズは好評ですが天邪鬼ですので好評であると書きたくなくなります。

という訳でして学生時代の話とします。

中学時代は特に周りに、交際云々は知らせていません。

 

中学入学については大した偏差値ではありませんが、とある私立中に合格はしていました。

しかし何にしろ大した偏差値でない点、通学に時間がかかる点、両親がそれ程教育にうるさくなかった点等々の理由から公立を選びました。

公立は学校が近い事が利点でしたが、輪々華との邂逅を果す為に行かねばならなかったのであろうと思っています。

中1時点では別クラスですが、顔と名前程度は知っていました。

あちらはやたらと作文,美術コンクールで表彰されていたからです。絵は美術室に飾られていましたので見ました。特に感想はありませんが芸術的構図ではありました。

他、猫の様な顔をした奴。いつも顔色が悪い、身長が低く痩せている位は認識していました。

部活も男女同じ空間でしたが部活に関しては、こちらは真面目に出ていません。公立だけに頭の宜しくない3年がおり、相手にしたくありませんのでさっさと帰宅していました。

卓球自体は地域に良い指導者が在り、そのクラブに在籍していました。自分にとっては習い事の一つ、遊びでした。

大会は出れば勝てました。全国までは行っていません。本気で打ち込んでいる選手には負けます。因みにダブルスは得手とは言えません。単独で勝ちたいので。

2年になり輪々華に出逢い、暫くは友人でした。

学校という場は狭いながら様々な思惑があり、面白いと言えば面白い所です。社会の雛型であり、あの中で人間関係を学びますが馬鹿らしいと言ってしまえば馬鹿らしい。

輪々華とは互いの確認こそありませんでしたが、勢いがあり親密になりました。

交際以前に自宅に来ていました。話す様になり、直ぐの事です。最初は友人数名と共に。2回目からは1人で来ました。

彼女には垣根が無い様でした。他の男子生徒とも話していましたし内2人と露骨な噂になっていましたが、要するに暇な女子の井戸端会議が発端でしょう。

(念の為確認しました。彼らとは友人だったとの事)

担任は30代の男でしたが、彼は女子生徒を名前呼捨てにしており大声で話す為、輪々華は嫌がっていました。猫の如く逃げ回っていたので代わりに、こちらで事務連絡をしていました。俺様は成績優秀な学級委員でしたので。

明確に付き合いましょうとなった時期は、中学2年の12月です。

それ以前から既に、色々とありました。

あちらは練習試合で何やら感ずるものがあった様子ですが、こちらは集中していましたので。それ所ではありません。

輪々華は卓球については独学です。本を読んで勝てる様にしたそうですが、体力が無いだけで運動神経そのものは相当良いです。

サーブの回転が読みにくかったのは、彼女が読めないからです。体力が無いからかラリーを続ける気はない様で、速攻ばかりでした。

負ければ沽券に関わります。勝ちましたが。

余談ですが輪々華は集団のスポーツは一律駄目です。彼女の得意なスポーツとは卓球以外は縄跳び,鉄棒,マット運動。地味です。

体幹が良くバネがあるので勿体無いが、とかく体力が無く先天性の狭心症も有ったりと、体育も部活も休みがちではありました。

交際以前の色々とは、こちらの自宅に来て本を読んで行ったり寛いで寝て行ったりと、無防備この上ない有り様を指します。

うちの親にも物怖じせず挨拶していました。

親が彼女を気に入ったのは先ず敬語が遣えた点、挨拶がしっかりしていた点です。

人の目を凝視して話す点も子供らしからぬ。

話す内容も風変わりであり「聡明な女の子」との母親の感想ではありましたが、数学に於いては誤りです。

母親が輪々華を愛でた最も大きな理由は、道路で轢かれ事切れた猫を彼女が血だらけで抱え、林に埋めに行ったのを見たからです。

普通であれば可哀相と思っても思うだけか、怖いとか汚いとの感情が先行します。

自分はその瞬間、消えた命の筋を追っていました。止め様がないものですので、嘆く等の感情はありません。

小雨が降っていました。雨に濡れたアスファルトや土の匂いに混じり、血と死の匂いがありました。

猫の周りに蒼白い鬼火が生じていましたが、彼女が触れると金色に変わりました。

輪々華にとっては自然で絶対的な弔いの様子でした。自分も一緒に行き手伝いました。

素手で泣きながら散った骸を拾い集めハンカチに包んでいるのを見、輪々華の本質を確信しました。自分にとっても焼き付いた姿でした。

彼女が泣いたのを見たのは、それが最初です。その猫は現在、彼女について歩き守っています。彼女の周囲には猫の光が多くいます。

その日は血まみれだった為に初めて自宅の浴室を借りて行き、たまたま帰宅の早かった父親が輪々華と話をし、どういう訳か彼女の新しい制服を家で購入するとの結論でした。

血で制服が駄目になったというのでなく、母親が輪々華の制服をクリーニングに出そうとしたがスカートのみ、春先だというのに夏物であり『冬物は売られたから』と彼女が口にした為。

彼女はうちの父親には最初から、家庭に問題があると多少は明かした様でした。

自分はその時は未だ聞いていません。

 

体育祭準備の際に放課後、倉庫内で二人で話をしたり図書館で勉強したり、体調が悪い時の彼女を保健室やらトイレやらに連れて行く内、特別な関係でないのが不思議になりました。

周りではとっくに付き合っているとの話になっており、尾ひれが付いて飛躍が見られました。否定する方が不自然でしたので、否定せず肯定せずでした。

その様な折り、漸く『付き合って』と来たので安堵しました。彼女は仕方なく持ち掛けたと言っていますが。

交際以前には何もありません。帰宅時又は倉庫内で手を繋いだ事はありました。

自室で輪々華が、猫らしく膝の上で寝た事もありました。

交際確定後の最初の時というのは、不意です。部屋にいる時に彼女がジュースを派手にこぼし、拭いてやっていたらその流れになっていました。

かいつまんで書きましたが、記憶の通りです。