告解

from takala

化粧

高校入学後、特にバイトを始めてから輪華は化粧をする様になった。
 違和感が有るので止めろと言った。バイト先はレストランなので化粧しないと顔色が悪く見えて良くない、との事。バイト先の同年の女子(他校生)もしていると言う。殆ど父親に夜遊びを注意された時の子供。言い訳染みている。
 輪華は顔立ちが単純である為、化粧すると派手に見える。彼女曰く「場末のホステス」。付け睫だの一時的に二重瞼にするだの、虚偽ではないか。
  4歳上に姉がいるせいか彼女の私服は大人びていた。当時は安室奈美恵やら華原朋美やらがファッションリーダーなるものであり、服装としてはそれらを模倣している様子。
 家ではうちの母親の趣味で子供らしくしている。父も母も輪華の髪型や服装には注意する事もなく自由にさせていた。
 現在は年齢的に子供に見えるが当時の輪華には、統一性が無かった。私服では派手に見える。制服でも不真面目に見える。家では大人しく物静かである。しかし二人きりになると言動が少女とは思えない。
 社会に触れているのだから先に大人になっているとも取れる。だが急に幼い物言いをしたり頼りない仕草、目つきになる。今なら対応出来るが当時は、混乱し振り回された。
 
 バイト等させなければ良かったのだ、高校に入学したからと言っても彼女は未だ15でしかなかった。22時迄働く様な環境を許したから、家から居なくなった。
 両親は自立性を重んじており、息子である自分にも意見らしい意見はしない。予め何か始めるに当たり、こちらの考えを話し了解を得る。反対された事は一度も無い。輪華にも同等に接したのだろうが、彼女の思考や行動には基盤が有る様に見えて実は無い。強く見えるが非常に脆い。
 両親が美容院代を渡しても、彼女は自ら髪を切ってしまい受け取らなかった。母親が高校入学祝いとしてバスの定期券と共に、パスケースに2~3万だと思うが紙幣を入れて渡しても遣っていなかった。
 パスケースは失踪する前日に家に置き去りにされていた。紙幣は手付かずだったそうだ。定期は一年間の物だった為、残りの3ヶ月分は払い戻しが利くと思ったのだろう。母は輪華の残した持ち物は全て棚に仕舞い、保管して居たが。
 実家での輪華は確かに両親にとって養女の認識だったかも知れない。輪華は家を離れてから、こちらの存在を兄に仕立て直したのかも知れない。
 不憫な妹。気の毒な妹。その様に思えたら如何に楽であったか。今更である。恋愛感情が絡んで以降思える訳がない。