告解

from takala

石との駆引き/重い男の教育

 輪華の水晶、あれはロシレム〔ロシアンレムリアン〕です。残念ながら偽物が多く出回っていますが、輪華が呼ぶと言うよりは彼女の霊妙に水晶が呼ばれるのであろう。
  ロシレムの丸珠は自分も狙っていましたので、店主から入手したと連絡が有った後水晶が輪華と自分とどちらを見初めるか確かめに行きました。言わずもがなですが。
 彼女のブログにも有りましたが、購入する腹積もりでなくば水晶には触れぬ方が得策です。ショーケースには数万~数十万、又はそれ以上の値が付いた水晶が有ります。遊女の様な水晶も在れば神格を有する水晶も在ります。どちらにしろ『触れたのなら連れて行け』と苦言を呈されます。結果としてこちらの運がやや、削り取られます。
 
  宝石も同様です。自分は宝石に対しては取引ならぬ駆引きをします。水晶に対しても当然ながら実行します。
 仮に輪華に対し1千万の指輪を贈る必要があるとします。彼女は昭和初期の縁日で売られていた指輪を喜びこそすれ、2百万の腕輪は喜びませんでした。その為これはあくまでも仮定とします。
 指輪に付いている石がスタールビーとします。否、やはりこの仮定は取り止めます。ルビーだのサファイアだのは王族の石とされるだけあり、非常に気が強い為駆引きは無駄です。特に10ct超えは無駄です。言う事を聞いた試しがありません。
  案外ダイヤは性根が真っ直ぐで扱い易いので、ダイヤとしましょう。
  この場合は触ります。輪華が居れば指輪を試着させます。ダイヤに対し『今はお前の為に動かす金が無いな』と言います。口に出すと酔狂ですから心中で、呟くとします。
  実際は1千万ならあります。億だと正直きついと言っておきます。指輪なんぞに汗と涙の結晶はそうそう差し出せません。億の金は遊ばせていません。主には不動産投資ですが、各所に割り振り有効に運用しています。申告しておきますが自分は富豪ではありません。庶民の小金持ちです。それからトレーダーが誰しも富豪な訳はありません。一瞬で私財を溶かす愚者も在ります。   

  有り難き幸せで化け猫に護られ一定の資産は有りますが、自分ごときのレベルはごろごろと居ます。大学在学中は元手3百で1日5万程度は継続的に得られましたが、地道な研究と弛まぬ努力が必要です。物事に依存する性質ならば、手を出さない方が無難です。ギャンブル依存に陥っていると気付いた頃には、自己破産せねばならぬ世界です。悪い事は言いません。素人は手を出さぬ様に。
 さてダイヤにつれぬ顔をしておき、その日はその場を後にします。ほぼ男女間の駆引きに等しいと言えます。
  ダイヤはこちらに来たいが為に財を呼び込みます。まさに貢ぐ女の図です。最短で1千万、纏まって入るとは限らないが入って来ます。
 注意点が2点有ります。悪しき女、もといダイヤの場合身内が死亡し保険金として金が入って来たり家族が事故に遭い賠償金が入って来る等、碌な事を呼び込みません。宝石だの貴石だのは善にしろ悪にしろ力を宿しています。見極めも命懸けです。
 もう1点はそうして得た金は必ずそのダイヤの購入に宛てねば、やはり相応の不運に見舞われるという事。
 この話でお分かりかと思いますが、蒐集家も然る事ながら宝石店を経営する人間もまた、資質に恵まれていなければなりません。
 骨董やら人形やらにも同じ事が言えます。輪華が若い頃に骨董の世界に入り指輪やアンティークドール、神像や石に囲まれ平然としているのは至極特殊な事です。
  同じ家に住んでいるこの自分も、彼女の息が掛かっていますので一味です。占室の連中も一味です。娘は彼女の子供ですから、赤子のみぎりより環境に浸かっています。
 
  ところで化け猫ブログに在りし日の深窓の令息の肖像が登場した事で、見知らぬ人物より「割と格好良かったのに何で重い女に引っ掛かったのか」等と若干失敬なメールが届いていました。解は極めてシンプルです。自分が重い男であるからです。
  重い女を自認する面々は、重い男が狙い処です。重い男は一旦見定めた相手から目を逸らしません。泥臭い、或いは面倒臭い恋愛しか出来ません。交際中も婚姻後も趣味が妻になります。
  稀少動物と言えますが実は珍しくありません。通常より多少重い男を教育すると、かなり重い男が出来上がります。重い男の教育方式、作り方は輪華に尋ねて下さい。彼女はパイオニアです。