告解

from takala

明晰夢

 鈍く纏わり付く梅雨の濡れた空気。制服を着ていると気付く。また夢を見ている。夢の風景に目を凝らす。輪華が現れるのを待つ。

 シーンが切り替わる。母校の保健室に居る。中学か高校か判断出来ない。ベッドに居る。真下に輪華の白い体がある。彼女の制服が散らばっている。制服から中学だと判る。

 夢の中だというのに人の気配を探っている、誰も来ない状況下の筈だが早鐘の心拍。輪華の胸に耳を押し当てても心臓の音がしない。霊を相手にしている様だ。

 当時は考えもしなかった事を思う、これは彼女だろうか。これは輪華の中の誰なのだろうか。

 急に輪華が叫ぶ。そうだった、彼女は日常であれば聞こえない程度の囁き声で話すのだが、この時だけ死を目前にしたかの様な悲鳴を上げる事があった。また夢だというのに慌てて彼女の口を押さえる。それでも声は止まらない。リネンを彼女の口に詰める。

  輪華の目を覗く。まだ判らない。輪華の様に見える。

  充の事等考えたくもない。しかし浮かび来る。彼は輪華ではない輪華であっても関係無く抱けたのだろう。彼の間口の広さ。それはこちらが劣る事になるだろうか。

 輪華の首を絞める。涙を流したら彼女だ。

 その女は暫くすると唇の両端を吊り上げた。笑った。輪華じゃない。意思に関わらず恐怖を覚える。恐怖?

 充は恐怖等覚えなかったのだろう。鈍感でありこの状況すらを、愉しめたのだろう。

 

 またシーンが切り替わる。今度は自室に居る。輪華は隣に居る。記憶にある光景だった。何故その様な事をしたのか、ロザリオを彼女の中に挿れていた。フロイト精神分析されそうだが、大した意味は無い。男は目の前に自身に無い窪みが有れば、物を用いて確認するだけだ。彼女は「神様に懺悔して」と言った。そして「神様に私を愛してるとちゃんと言って」と続けて泣いた。

  これは輪華だ。夢の中の彼女に何かを問い掛けた事は、過去と同様に無かった。明晰夢の中なら言える。「これは22年後に見ている夢だ」と伝えた。彼女は「私も22年後だよ」と答えた。

 驚きの余り目を覚ますと、現実の現在の輪華が腕の中で目を開けていた。仄暗い朝方の寝室で彼女は「私の夢にまで侵略して来ないでよ」と笑って言った。