告解

from takala

怨念

ベッド上から動けなくなった輪々華について思う処が有る。

こちらの願が強過ぎて彼女は重病人となったのかも知れぬ。

独身時代、一室に彼女が居れば良いと願っていた。一室……ベッド上に居れば良いと。監禁しなくとも出て行かないのならば、充を選ばないのであればベッド上に限らず一室に限らず一人で外出させても良いと思っていた。許可の視点に思われるであろうか。そうでなく病弱な点を慮っての事でもある。

 

ベッド上で日がな一日、来る日も来る日も過ごすだけの人生を想像して頂きたい。当たり前の精神状態では不可能。ベッドから動けないので動きたくないという彼女は今、半死半生なのかとも思う。

動こうと思えば動けるのでないか。精神が先に衰弱すれば身体も引摺られる。入院して体調管理している筈がまた痩せている。

願とは念だ。無意識に輪々華を一室に置いておきたいこの願望。その念に彼女が負けている。強い念とは魔術だ。人の意識,状態,情況,環境を変容させる。

告解であるからして正直に言うが、片時も彼女から目を離したくない。今の仕事等どうでも良い。責任の生じる範囲では仕事をするがそれ以上はしない。目の届く場所に居て欲しい。ベッドから離れられない彼女の不自由さに対し不謹慎この上ないのだが、深く安堵する。もう何処にも彼女は行けないだろう。

 

元家内・七奈には手に入らない女を求めたのだろうと言われる。輪々華は充だけを絶対的に愛していた筈であり、他の人間を慈しみはするが愛する訳がないと。七奈曰く輪々華は慈しみで再婚をし他の誰かが「入手」は出来ないのだそうだ。少なくとも人間には。

では充はどうか。彼は発狂し三途の川迄行った存在である為、人間の範疇には居ないそうだ。

この見解を輪々華に告げると笑っていた。そして願の強さが災いして申し訳ない旨も伝えたが、そちらも笑っていた。自意識過剰だと笑っていた。